読書日記その323 「逆境を越えて 宅急便の父 小倉昌男伝」

「逆境を越えて 宅急便の父 小倉昌男伝」
これはよく書かれてます(^^)
小倉昌男氏の本は多く出版されてますが、その中でも上の方では。
後発なので致し方ありませんが、やはり内容が重複してたりします。
しかし同じ内容でもより突っ込んだ事が書かれてたりするので、クロネコヤマトや小倉昌男氏に興味のある方は一読の価値はあるように思います。
「新しい業態」「新しい市場」を切り開いた小倉氏には本当に感服しますし本当に尊敬します。
今では当たり前の宅配事業は当時は儲かるわけがないというのが常識でした。
しかし小倉氏だけが宅配事業はビジネスとして成り立つのではと考えます。
物事にはメリットとデメリットの二つが必ずあります。
人間というのは常識というものにはメリットばかり目が行きデメリットになかなか気づきません。
逆に非常識と言われるものにはデメリットにばかり目が行くので、だから非常識と言われて敬遠されます。
しかし小倉氏はあえて常識を疑い、非常識と言われるもののメリットを探っていきます。
そして74年頃から宅配事業の可能性を真剣に考え始め検証に検証を重ね、76年に満を持して本格的に事業としてスタートさせます。
それまで運送業にマーケティングという概念はありませんでした。
しかし小倉氏は宅配事業を始めるに当たり、それまでの運送業になかったマーケティングという概念を取り込みます。
最初はなかなか認知されず苦しい時期もあったようですが、小倉氏の緻密なマーケティングが次第に功を奏し全国に宅配ネットワークを築き上げることになります。
人の役に立つサービスや商品は必ず成功する。
貢献、開拓、実行。
サービスが先、利益は後。
全員経営。
豊かな社会の実現。
小倉昌男氏の本は学ぶ事が実に多い!
ボクも「バースデーケーキ配達便!」を頑張ろうと思いました(^^)
それにしても小倉氏のこの手の本はたくさんあるのに、何故このタイミングでまた出版されたのだろうと思いましたが…
いいんです!
尊敬する小倉昌男氏の本はいくつあってもいいんです、はい!
読書日記その322 「覚悟さえ決めれば、たいていのことはできる」
読書日記その321 「逆境力のコツ」
読書日記その320 「失敗の本質」

「失敗の本質」
多くの経営者に読まれてる名著(^^)
大東亜戦争(本書ではこの呼称を用いている)における日本軍の失敗を分析しまとめたものです。
これが思った以上に細かく分析されていて面白い!!(^^)
そしてそれが何故、経営者に多く読まれるかというと、
本書は戦争の敗因研究ではなく組織のあり方を研究したもので、現代の会社経営にも大いに通じるものがあるからです。
論理的思考より精神論。
曖昧な伝達。
場の空気の集団的同調。
敵に対する過小評価。
環境変化の拒絶。
技術力の錬磨、職人的思考の固執による自己革新能力の欠如。
などなど…
特に我々のような職人的な手作りの業界は
「技術力の錬磨、職人的思考の固執による自己革新能力の欠如」
によって、人の問題が多く発生します。
技術力を高めるのは大事です。
しかし
「昔は~」「俺の時代は~」「今の若者は~」
と言って過剰な技術力の錬磨を強制することは、過剰な長時間労働をひきおこしそして過剰な離職率にも繋がります。
やはり今の時代は昔と違うので、そのような事を強制するよりも
「頑張らなくとも(笑)上手くまわる仕組み」
を作ることが大事なのではと感じます。
(職人的思考とはかけ離れてますが....笑)
それから本書を読むに当たって大東亜戦争の戦史を知ってて読んだ方が理解が深まるでしょう。
真珠湾攻撃、ミッドウェー、ガダルカナル、インパール、レイテなど、本書でも一連の流れに触れてますがあまりに細かく記されてるため、予備知識がないとちょっと難しいかもしれません。
しかしある程度知ってる上で本書を読むと、非常によく分析されてあるのに気づき深く考えさせられます。
米国も多くの失敗をしてます。
なのに何故日本は組織として機能せず大敗したのか…
組織という観点から多くの教訓を洗いだした本書の内容は、言わば反面教師として今の経営に活かしていかなければと思いました。
因みに何年か前に「超入門 失敗の本質」という本書をもっと簡単にまとめた本が出版されましたが、
予備知識として読むにはいいですがあまりに内容が浅すぎて身にならないように感じます。
やはり出来れば本書を熟読して理解を深めた方がずっと身になると思いました(^^)
読書日記その319 「壬生義士伝 下」

「壬生義士伝 下」 浅田次郎 著
新選組隊士、吉村貫一郎の義に生きた生涯を描いた物語。
上巻は正直ちょっとだるくて最後まで読めるか心配でした。
しかし下巻になって初めてこの作品の素晴らしさを感じることが出来ます。
特に貫一郎が腹を切ろうとしながら覚悟が定まらずにぐずめいていた時に聞こえてきた父の声のくだりからはもう圧巻!
義とは何か、武士道とは何か、そして生きるとは何か、切々と語られます。
故郷に帰りたい、家族と再び暮らしたいと願いながら叶うことが出来ずに貫一郎は自害します。
それはもう無念で無念で無念で無念で言葉では言い表せないほどでしたでしょう。
しかしラストで貫一郎のその無念の思いと息子の帰郷が相まって…鳥肌(涙)
ご存知の方もいると思いますが「永遠のゼロ」はこの作品をもとに描かれた作品(要はパクリ)と言われてます。
しかしボクからすると作品の質がもう比べ物になりません。
浅田氏の文章の方が圧倒的に質が高い!
さらに言わせてもらえばこの「壬生義士伝」と「永遠のゼロ」を比べること自体が浅田氏に失礼だと感じる。
(百田ファンの方がおられたらスミマセン…)
さらにさらに、吉村貫一郎の「生きる」と「永遠のゼロ」の宮部久蔵の「生きる」では決定的な違いがあるのに気づく。
宮部久蔵は家族のために、そして生きて帰るために戦闘から逃げるのですが、
吉村貫一郎は家族のために、そして生きて帰るために新選組に入隊し、戦に赴き、そして人を斬るのです。
この違いをもっと詳しく話し出したら恐らくとてつもない長文になるので省きますが、
正直ボクは宮部久蔵には共感出来ませんでした。
宮部久蔵の「生きる」ための行動は当時の時代背景を熟考しての本当の意味での「生きる」ための行動ではないと感じるのです。
つまり一言で言うとキャラ設定が浅い(笑)
しかし吉村貫一郎とこの作品にはとても共感する。
生きるために人を斬る。家族のために戦う。
心の内を探れば、
生きるために人を斬らざるをえない。
家族のために戦わざるをえない。
矛盾を感じながらも必死に生きて戦う貫一郎は最期になって自分の生き方が本当に正しかったか迷いを感じ…
史実をもとにしたフィクションの物語ですが、とても素晴らしい作品でした(^^)
ちょっとくどくて、ちょっと暗くて、ちょっと重たい小説ですけどネ(^^)