
「坂の上の雲 8」 司馬遼太郎 著
読み終えました!! 全8巻!
最後はロシアが世界に誇るバルチック艦隊を迎え撃つ東郷平八郎
率いる日本連合艦隊。
ロシア軍が日本海側を通るか太平洋側を通るかで秋山真之は大き
く悩む。
一国の勝敗が懸かっているので、それはもう尋常ではないプレッ
シャーだったと思います。
しかし真之がこれほどまでに戦術に集中でき、自分の能力を十二
分に発揮できたのは、東郷が全海軍を指揮し決断する責任を負っ
ているからこそであり、そして逆に東郷が戦術まで考えてたらお
そらく正しい決断はできなかったと思うので、日本海軍は本当に
良く機能したと思います。
東郷は弱者である日本海軍が強者のロシアに勝つための戦略を考
え抜きました。
そして出した結論は
「砲弾を敵よりも多く命中させる」
という当たり前の平凡な戦略でありましたが、しかし東郷はこの
一点に集中し、全艦隊に浸透させ機能させました。
とにかく砲術を徹底的に訓練させたのです。
さらに
「砲員の能力に頼っていても飛躍はない。射撃指揮法が大切」
と説き、世界に類を見ない独創的な方法を開発します。
さらにさらに東郷は開戦前に
「海戦は敵がどれだけ被害を負っているか分からないばかりか、
味方の被害ばかりを目にするから自分の方が負けているように感
じる。敵は我々以上に辛がっているのだ」
と兵員全員にこの言葉を徹底させます。
このように戦闘中どのような状況に陥っても、兵員達の士気が保
てるような言葉を掛けるのです。
要は
準備が大切だ ということです。
そしてバルチック艦隊と日本海軍の戦闘の火蓋が開かれるので
すが、ここで日本海軍は世界中が驚く奇策にでます。
東郷艦隊はいきなりUターンをし、敵に対して無防備の状態に
なります。
それを見たロシア軍は「東郷は狂ったか」と砲弾を浴びせます。
三百発以上の砲弾が落ち、凄まじい被害を受けます。
一方的に砲弾を浴びる東郷艦隊はUターンからα運動をし、ぐる
りと周り、そしてなんと敵の主旗艦スワロフの右前方にでるのです!
そして日本海軍の大砲がスワロフ目掛けていっせいに火を噴く!
「T字戦法」
考案は秋山真之。自滅の恐れのある捨て身の戦術です。
そしてその奇策を採用し決断したのは東郷平八郎。
東郷には単なる神頼みではなく、しっかりと勝算があったとされます。
東郷はこの日の風向きを見極め、常に日本海軍が風上に立つような
位置取りで戦術を進行したため、ロシアの砲弾はそれほど致命傷には
ならなかったのです。
肉を斬らせて骨を断つ弱者が強者に立ち向かうには正攻法では絶対かなわないという
原則に基づくまさに東郷の戦略・決断、そして真之の常識にと
らわれない戦術の勝利です。
日露戦争において、弱者であるはずの日本がこれだけの勝利を得た
のは、ロシアは単なる侵略政策の一環で皇帝の私的野望のための戦
争だったのに対し、日本は国の存亡を賭けた国民戦争であったこと。
ゆえにロシアは精神的弱さやもろさが要因で自ら負けたところが多
く、それに対し日本は準備の周到性、優れた計画性とロシアのその
ような事情により、際どい勝利を拾い続けた結果、弱者の日本が
強者のロシアに勝利するのです。
まさに
弱者の戦略の原理原則 であります
この日露戦争の勝利が、後の太平洋戦争での敗北の要因と言われ
ます。
戦争というのは敗戦が国民に理性を与え、勝利が国民を狂気にする
と、司馬遼太郎氏は言ってます。
論語では
「人にして遠き慮(おもんばか)り無ければ、必ず近き憂(うれ)
い有り」
という言葉があります。
好調だからといって浮かれていると、必ず近い将来足をすくわれて
失敗するという意味です。
次は太平洋戦争が舞台の歴史小説が読みたくなりました。。。
文才がないのでこのブログを書くのに3時間以上かかってしまいました....ははは